不妊治療の種類
- タイミング指導
- 超音波断層法による卵胞の大きさや尿中LHサージ(排卵を促すホルモンが出てきているかどうかをみます)のcheckなどにより、排卵のタイミングを見つけていきます。
- 薬や注射による治療
(主に排卵誘発剤) - 排卵障害がある方の場合はもちろんですが、排卵が自然に起こっている場合でも、排卵誘発剤の内服や注射を使用することで子宮頚管粘液が増加したり、子宮内膜が厚くなったりすることで妊娠し易くなります。ただし、薬剤を使用することで発育してくる卵の個数が増加してくることが多いので、副作用として多胎の発生率が上昇するということがあります。当院では、ここ5年間で双胎までの妊娠しかありませんが、排卵誘発剤を使用した場合の双胎の発生率は自然妊娠に比べて高くなっています。また、排卵障害のある方のなかで排卵誘発剤に強く反応する方がおり、こういう人の場合たくさんの卵が卵巣内に育ってしまい、卵巣が大きく腫れたり、重症例では腹水といって腹腔内に水が貯まってしまう副作用(卵巣過剰刺激症候群といいます)が出ることがあります。薬剤の使用方法などに注意しないと危険な副作用といえます。
- AIH
(配偶者間人工受精) - 精子の濃度が低い、運動率が低い、精液量が少ない、子宮頚管粘液の量が少ない、タイミング指導だけではなかなか妊娠しない、といった場合に行われます。当院では、採取して頂いた精液を培養液とともに処理し、元気な精子だけを集めて(swimup法)子宮内に注入する方法をとっています。当院のAIHでの妊娠率は、ここ5年間で周期当たり10%、患者当たり30%の成績です。AIHで妊娠する方の96%が6回目までに妊娠しています。ここで妊娠しない場合、次の体外受精に進んだり、腹腔鏡を受けることになります。
- 体外受精(IVF-ET)
ならびにその関連治療
(ART:生殖補助技術) - 不妊治療の最終手段ともいうべき治療ですが、すでに30年以上の歴史がある治療であり、特殊な治療ではなくなりつつあります。現在日本でも、1年間に約2万5千人の赤ちゃんがARTで妊娠、出産しています。以下、当院で行っている治療について紹介いたします。
- 体外受精一胚移植(IVF-ET)
- 初めに行われた基本的な方法で、卵と精子を培養液中で混ぜ、受精し成長した胚を子宮内に戻します。卵管性不妊や機能性不妊などが適応になりますが、精子の受精能に問題がないことが前提になります。
- 卵細胞質内精子注入法=顕微授精(ICSI)
- Aの通常の体外受精では受精卵が得られない場合に行われる治療であり、主に精子の数が少ないことが原因の場合に行われます。細いガラス針を用いて、顕微鏡下に精子を一匹ずつ卵の中に注入して受精させる方法です。通常の体外受精と受精率、妊娠率に差はありません。
- 受精卵凍結保存・融解胚移植
- 体外受精や顕微授精で得られた受精卵のうち、子宮内に戻した胚のほかに残った余剰胚を凍結保存する方法です。新たに採卵しなくても、後日その胚を融解移植することにより妊娠のchanceが増えることになります。また、新鮮な胚移植をするのには条件が不適切な場合には、全胚凍結保存をして、後日融解移植をすることもあります。患者さんの肉体的負担や経済的負担を少しでも軽減することができます。最近5年間の凍結胚融解移植の妊娠成績は胚移植当たり45%になっています。(40歳未満52%、40歳以上22%)
- 胚盤胞移植
- 従来、採卵後2~3日目の4~8細胞期で胚移植するのが一般的でしたが、その方法では妊娠しない例もあり、ここ4~5年、5~6日目まで培養を続けて移植し(胚盤胞移植)、妊娠率をあげる方法が行われています。
- 補助孵化(assisted hatching)
- 胚が子宮内膜に着床する時には、胚を囲んでいる透明帯が破れて胚が脱出することが必要です。これを人工的に補助するために、透明帯を切開したり薄くする方法です。当院では、主に凍結胚盤胞移植で行っています。
- 胚の2段階移植法、SEET法
- 複数回の胚移植を行っても、妊娠しない場合に行います。初期胚と胚盤胞を2〜3日の間を空けて2回移植するのが、2段階移植法です。着床率が上がりますが、2個移植する事で双胎妊娠の可能性が出てきます。1個の胚移植で妊娠率を上げるために考えられたのがSEET法です。新鮮胚の培養で胚盤胞に育った時の培養液を凍結保存し、凍結胚盤胞を移植する際、その2〜3日前に凍結してあった培養液を融解して子宮内に注入します。子宮内膜を刺激して、着床率が上がると考えられています。